「法人と個人、どちらで米国不動産を持つべきか」
「今期の利益に対して、有効な法人税対策はないか?」 「個人の資産を日本円だけで持っているのはリスクではないか?」 米国不動産の購入を検討する際、多くの経営者や資産家の方が最初に突き当たるのが「法人と個人、どちらの名義で保有すべきか」という問題です。 かつては個人の高い所得税率を圧縮するスキームが主流でしたが、2020年の税制改正を機にその前提は大きく変わりました。現在では、法人・個人それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、「目的」に合わせて選定する必要があります。 本記事では、税制の仕組みを紐解きながら、貴社またはご自身の状況においてどちらの保有主体が最適なのかを判断するための基準をわかりやすく解説します。 1. 「個人保有」の現状:税制改正後の役割とメリット 2020年(令和2年度)の税制改正により、個人が海外不動産で得た減価償却費の赤字を、給与所得など他の所得と相殺(損益通算)することは原則としてできなくなりました。 これにより「個人での節税目的」の購入はメリットが薄れましたが、以下の目的においては現在も有力な選択肢です。 個人保有が適しているケース • 純粋な資産分散・キャピタルゲイン目的 節税(課税の繰り延べ)を主目的とせず、ドル建て資産の保有や、中長期的な不動産価値の上昇(値上がり益)を狙う場合です。 • 長期譲渡所得による税率メリット 5年を超えて保有した不動産を売却する場合、個人の譲渡所得税率は一律約20%(所得税・住民税)に抑えられます。個人の所得税率が高い方にとっては、売却時の税負担を低く抑えられるメリットがあります。 2. 「法人保有」の現状:減価償却を活かした財務対策 個人に対する制限に対し、法人における海外不動産の取り扱いについては同様の制限が課されていません。 そのため、企業の財務対策としての優位性は現在も健在です。 法人保有が適しているケース • 本業の黒字との損益通算(財務改善) 法人であれば、米国不動産の減価償却によって生じた赤字(帳簿上の損失)を、本業の利益と相殺することが可能です。 • 課税の繰り延べ(タックスコントロール) 利益が出ている事業年度に減価償却費を計上して法人税負担を平準化し、数年後の売却時に経営者の退職金など(損金)とぶつける「出口戦略」を描ける場合は、法人保有が極めて有効な選択肢となります。 3. 【比較表】法人と個人の主な違い 保有主体の違いによる税務上の特徴を一覧表にまとめています。 (※Notionの標準テーブル機能を使用すると綺麗に収まります)比較項目法人名義個人名義主たる目的減価償却による「課税の繰り延べ」ドル資産の保有(資産防衛)・値上がり益の享受他所得との損益通算可能(本業の黒字と相殺可能)原則不可(他の所得と相殺できない)売却時の税率法人税率(実効税率は企業規模・事業年度により異なります)長期譲渡の場合、約20%(一律)相続時の評価自社株評価(引き下げ効果が期待できるケースもある)現物資産として海外資産の評価(原則時価) 4. どちらを選ぶべきか?判断のポイント 最終的な決定は、投下する資金の性質と「目的」を基準にすることをお勧めします。 • 「法人の利益をコントロールし、手元のキャッシュを最大化したい」 👉 法人名義での保有が適しています。 • 「個人の資産を日本円だけでなくドルに分散し、中長期で資産を守り育てたい」 👉 個人名義での保有が適しています。 なお、将来的に法人から個人、または個人から法人へ名義を変更(売却移転)する際には、日米双方での譲渡益課税や諸経費が再度発生するため、初期段階での慎重なスキーム構築が不可欠です。 5. まとめ:自社の財務状況と個人の資産背景に応じた選択を • 2020年の税制改正以降、「個人は資産防衛・投資」「法人は課税の繰り延べ」と、目的が明確に分かれるようになった。 • 法人での保有は現在も有効な財務戦略の一つであるが、売却時(出口)まで見据えた精緻なシミュレーションが求められる。 • どちらを選択するにしても、米国の現地税制(連邦所得税や州税)および国内税制の双方に精通した専門家のサポートが欠かせません。⚠️ 免責事項 (※NotionのCalloutブロックを推奨) 本記事に記載されている税制やスキームは一般的な事例に基づく情報提供を目的としており、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の運用の検討にあたっては、必ず国際税務に精通した税理士や専門家にご相談ください。